少女を最後に抱き締めたのは馬車を出す前に寝かしつけた時
髪は隠して、おやすみ、と言った
別れのことは最後まで言えなかった
けれど、空気を感じていたのか少女は悲しげに瞳を揺らしていた
それが目蓋の裏に焼き付いて忘れられない……
王宮での生活には慣れたといえば慣れたが………
「ごきげんよう」
『女神』様が現れてマリオンはにこりと笑った
「こんにちは、アルメリア様」
燃えるような紅く豊かな髪は緩やかに波打っている
美しく微笑む女性はマリオンの『家族』のようなものだ
「先日は大変でしたわね。まさかあんなことになるなんて、驚きましたのよ?」
「申し訳ありません。ですが私は大丈夫ですので、お気になさらないで下さい」
当たり障りのないように言葉を交わしてマリオンはサッサとアルメリアのそばを離れる
(殺気出しすぎ)
王宮に上がって2年近くが過ぎた
マリオンはアルメリアに狙われている
何故かはまだ分からないが黙って死んでやる気はない
さすがにこの間、一つの儀式として町に下りたとき暴動に巻き込まれたのはヤバかったが
マリオンに六花の騎士はいたが、そいつはイマイチ信用出来ないのでそばには置いていなかった
「おや?」
マリオンは自分の離宮近くで小さな影を見つけて立ち止まる


