初めて来た王宮、与えられた離宮は慣れるはずもなくて
6歳のトーワはふと外に出た
止める者はいない



適当な木の影でうずくまる
このまま、薄暗い木の影でこのまま………消えてしまうのではないだろうか?

……イヤ、ダメだ

そんな事許されない、オレは………



どれくらいそうして居ただろう、不意に誰かが声をかけてきた


「初めまして」


緩慢な動きでその声に振り向けば緋色の髪をした男がいた
その男は静かに話しかけてくる


「君がトーワ君?僕はマリオンと言うんだ。これからよろしく。こんなところでどうしたんだい?」


次々しゃべるその男を無視してトーワは顔を伏せる
しかし、マリオンは気を悪くすることもなく飄々と笑った

そのままマリオンは手を伸ばしてトーワの頭を撫でようとした
しかし、触れた瞬間トーワは鋭く手を払いのけた
だが、それでもマリオンは微笑むだけだった


「恐いかい?温もりを与えられる事が」


その言葉にトーワは目を見開く
マリオンは不思議な紫紺の瞳をしている


「でも、恐がることはない。僕が君の温もりに触れたいだけだから。君は何も悪くない、僕のしたいようにしてるだけさ」



その言葉どおりまた勝手に抱き締めて来た
優しく優しく……何かを確かめるように



泣きたくなった



だけど、トーワは泣けなかった