私はペットボトルに手を伸ばした。
でも、私より背の高い奏斗はヒョイと私を交わす。
「…くッ、そぉー…!」
奏斗は、私が手を伸ばす度に、ペットボトルを高く上げて取らせないようにした。
背伸びしても届かない!
「ハハッ!ほら、取ってみろよ」
奏斗は笑いながら私を挑発した。
「……」
…おかしい。
いつもの私なら、この挑発にすぐにのっかっていた…はず。
…なのに、
私の心臓、おかしい!
私はそんな挑発よりも奏斗の今の顔に見入ってしまった。
─ドキン
…ほら。
「……」
奏斗の笑顔を見ただけなのに、私の心臓が跳ねた。
「おい?取んねーの?」
奏斗が突然動きを止めた私の顔を覗き込んできた。
「…!!!」
目の前にいきなり奏斗のドアップがきてビックリした私は、一歩後ろに後退った。
「ん?どーしたんだよ」
「なっ!…何でも、ねーよ」
顔を見られたくなくて、私はそっぽを向いて言った。
「何かあんだろ」
奏斗は私をジッと睨みつけるように見た。
それよりも、
…思い出したよ。
私、病気だったんじゃん!
そのことを由奈に相談しようと思ったんだった。
…何忘れてんだよ、小夏。
「それやる。…じゃーな」
「…は?」
私は今すぐにでも由奈に相談したくて、奏斗をおいてその場から走って教室に戻った。
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