「あ、餌なんか無いからね」
お腹がすいて泣いてんだろうけど、このおにぎりは私のだし、アンタにやる飯なんか無いんだから!
「んなことどーでもいーの!」
私のところに来るなり、いつもの突っ込みもせずに叫んでいる。
「ん?じゃあ何で鳴いて(泣いて)んの?」
まぁ突っ込みをしなかったことはどーでもいいけど。
私は包みから出したおにぎりを食べながら聞いた。
すると秋哉は真っ青な顔をして両手で頬を覆った。
「かなりんがいないッ!」
………
は?そんなこと…?
「…んな事で食事の邪魔しないでくれる?」
奏斗がいないなんて私に関係ないし。
そんなに真っ青になることなの?大袈裟じゃない?
「どーしよー!もしかしたらかなりん…」
私の言葉を無視して今度は頭を抱えた。
はぁ。知るか、んなの。
それより私は由奈と至福の時間を過ごしてんだ。
奏斗なんか知らねー…
……
「……あ、忘れてた」
知ってんじゃん私。
奏斗は私の家にいるんだ。
秋哉に言おうと思って忘れてたや。
私は一応伝えようと思って秋哉の方を向いた。
「…あき」
─ガラッ
私の声と同時に教室のドアが開いた。
ドアが開いた方を秋哉が見る。
「あ!かなりん!」
眠そうな奏斗が教室に入って来た。
ご主人様が帰ってきて喜ぶ犬みたいに、秋哉の顔がパァッと明るくなった。
「かーなーりー「…ん。鍵」
私達の所まで来た奏斗は飛びつこうとした秋哉を無視して、私に鍵を投げた。
私はその鍵を片手でキャッチした。
「あ、ちゃんと鍵閉めたんだ。さんきゅ」
「…ん」
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