「く、食うに決まってんだろ!」
奏斗の言葉で我に返る。
止めていた箸を持ち直してサラダに箸を伸ばした。
…悔しいけど、やっぱり旨い。
「ならいいけど」
そう言って奏斗もサラダを食べた。
私はサラダを食べながら奏斗をチラッと見た。
目を軽く伏せ、なめらかに箸を口に運ぶ姿は意外にも行儀がいいように見える。
私の視線は自然と口元にいっていた。
厚すぎず薄すぎない、形のいい唇の端は赤い痣が出来ている。
…そういえば、喧嘩したんだっけ。
「ねぇ、あの男とはもう大丈夫なの?」
私の言葉に軽く伏せていた目を上げた。
「んー、大丈夫だろ」
…コイツは何を根拠に言ってんだろ。
まぁいいや。また何かあったら殴って逃げんだろ、コイツは。
…そういやあのごっつい男、奏斗が俺の女に手を出してー、とか何とか言ってたよね?
…本当か?
─ズキッ
「……」
…何か、急に胸が痛くなったんだけど。
ズキッて言ったよ?
…どーした!?
えッ!?
マジで私の心臓どーした!?
さっきっからドキンッだのズキッだの、一体どーなってんのッ!?
病気か?
私は病気を患ってしまったのか?
…………
イヤァァァアーーッ!!!
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