わぁ、犬のしっぽが立ってるよ。
威嚇かな…。
(小夏にはそう見えてます)
「もう!何か言ってよ、かなりん」
そう言って犬は奏斗に助けを求めた。
「ハチ公、お手っ!」
が、奏斗は犬の前に手を差し出しただけだった。
「かなりんまで…」
お!犬の耳が垂れてる。
こっちまでシュンってなっちゃったよ。
こりゃあ犬が可哀想だ。
仕方ない!小夏様が助けて差し上げよう!
「こら!奏斗!秋田犬はお手じゃなくておかわりがいいんだよっ!」
私はくつろいでいる奏斗に向かって怒った。
「違うってば!俺は秋哉なの!」
犬が吠えた。
あー、怒ってんのはそっちね。
犬の言いたい事は分かったよ。
「ハチ公じゃなくて秋田犬って呼んでほしいってよ!」
私は犬の代わりに代弁した。
「そうじゃない!俺人間!犬じゃない!」
な、何を言ってる!
きっとこれは自分を受け入れられないんだ。
私が教えてあげないと。
「違う!お前は犬だ!自覚しろ!」
私は犬を揺すぶりながら説得するように言った。
「だからぁ人間ーーッ!」
──────────…
「なんだ。人間かよ」
数分後、犬の必死の説明により犬が人間だと知った。
隣で奏斗はあくびをしている。
「見た目で分かるでしょ!」
いや、見た目は完璧犬だから。
あーでも、よーく、よぉーく見ると、人間に見えなくも…ない……かな。
「人間だよ!」
はぁ。皆さん、どうやら可愛らしい犬は秋哉という人間だったようです。
ホントすみませんね、この秋哉という人間が紛らわしいばかりに…
(小夏が悪い)


