「これだけだから、僕帰るね?」
そう言った流夏はきびすを返すと玄関に向かった。
…え。帰んの?
ちょッ!早くない?
本当に伝言伝えに来ただけじゃん。
玄関まで見送ろうと私が立ち上がると、不意に流夏が振り返った。
今度は何だ?
「あ、奏斗?さん。僕が言うのもあれだけど、この女やめといた方がいいよ」
私をチラッと見てから真顔で言った。
流夏の真剣な顔なんて初めて見たなー。
でも、奏斗はそんなことない!って言うに決まって
「………うん」
「ほら…え、うん!?」
おいッ!そこは否定するところでしょ?
何、うんって。
「良かった。んじゃねぇ〜!」
いや、流夏も良かったってッ…
─バタン
「……」
…マジで帰りやがった。
流夏が出て行ったドアを見つめながら私はしばらく黙っていた。
…椿
流夏が言っていた椿の伝言が頭の中で繰り返される。
転校してから一度も会っていない。
少し落ち着いてから行こうと思っていたら、いつの間にか日が経ってしまった。
…会いに行くかな。久しぶりに。
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