「あの…あ、ありがとうございましたっ!」
深くお辞儀をしている女の子に、私は微笑みながら女の子の頭を撫でた。
「怖かったろ?もう安心しな。アイツら逃げてったからさ」
私が笑って言うと、女の子はホッとしたのか、可愛い笑顔を見せてくれた。
その笑顔は本当に可愛く、肩下まである黒髪が清楚さを引きだしている。
「つーか、こんな時間に一人でいるなんて危ねーよ?今みたいな奴らが、たくさんいんだから」
私が女の子に顔を向けると、女の子は自分の服をギュッと握った。
セーラー服を着た女の子は、…学校帰り?
いや、でも今真夜中だぞ?
だったら塾帰りとか…ん?
いやいや、そんな遅くまでやる塾もねーだろ。
なら何で、こんな時間に、しかも制服で一人なんだ?
「私……」
俯いた女の子は体を小さく震わせていた。
「あーいや、言いたくねぇなら言わなくていいよ、うん」
人には話したくないときもあっからな。
心優しい小夏さんは、そのくらいの配慮くらい持ち合わせていますよ。
「…ありがとうございます」
そう言って女の子は微笑んだ。
うん、やっぱりこの子には笑った顔が一番似合う。
私は投げ落としたビニール袋を拾うと、その場に立っている女の子へ体を向けた。
…あれ、まだいる。
この子は帰る気がないのだろうか。
そして私は自分でも驚く行動に出ていた。
私をジッと見ていた女の子に、私は…
「…なぁ、私と一緒に来る?」
私たちとは全くと言っていいほど正反対の子。
こんな清楚な子を連れて行くのは悪いと分かっていたのに
私は無意識の内に、そう口にしていた。
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