─ガサッ
「……」
スタートの合図の音が鳴り、みんなが応援をしている場所…
ではなく、そこからだいぶ離れた所で、懸命に走ってる人の姿を見ている奴が一人。
…いや、俺も含めて二人。
「奏斗。やっぱり来てたんだね」
「…うるせぇよ、律」
俺が後ろから声をかけると、奏斗は振り返りもせずに答えた。
絶対に来ると思ったよ。奏斗ならね。
奏斗の視線の先は走っている小夏。
怒ってるとか言いながら、一週間心配だったんでしょ?
素直じゃないよね、奏斗って。
そういう間に、小夏がゴールした。
奏斗は俺の隣で大きなため息をついた。
あー、ここは俺の出番。何てったって俺は二人の…
俺は奏斗に体を向けて言った。
「なぁ、奏斗。奏斗の気持ちも分かるよ?
…でもさ、小夏だってこの一週間必死に頑張ったんだ。それだけは分かってよね!」
俺が言うと、奏斗は息を整えてる小夏から俺に視線を向けた。
「…あぁ。分かってる」
奏斗はそう言って軽く微笑んだ。
…ように見えたよ。
いや、ニカッていう笑顔じゃないからさ。
少し睨まれた気もするんだけどさ。
でも…うん。笑った笑った。
奏斗はそのまま小夏の方へ歩いて行った。
…さっ、これで俺の任務終了かな。
ホント、二人には感謝してもらいたいよね。
この俺が二人の
キューピッド!であることにさッ!
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