─『短距離走に出場する生徒は入場門に集合して下さい』
…よしッ!ついに、勝負の時がきた。
「頑張るぞぉ!おー!!」
─シーン
ねぇ、
「…誰もいないのはナゼ?」
ちょっ、私これから将来を賭けた勝負をするんだよ?
律も秋哉も由奈もいない。
さびしっ…
せめてエールくらいは欲しいな。
…もう入場門行っちゃうからね?
「あら、コタツ。同じレーンなのね」
一人寂しく集合場所に着くと、私の隣にブリ子が並んでいた。
…まさか、隣にいるってことは一緒に走る訳じゃないよね!?
「だから、同じレーンって行ってるでしょ!一緒に走るのよ!」
「ガーン」
やばっ。
何か目の前が霞んで見える。(涙)
さっき一人で気合い入れたんだけどな。
やっぱエールもらわないとダメかも…
「小夏ちゃん!」
「由奈ぁ!」
向こうで由奈が手を振っているのが見える。
わぁ!由奈が天使に見えるよ。
「小夏ちゃん!頑張って!応援してるから」
「うん!頑張るぅ!」
うしッ!気合い入ったぜ。
(単純)
由奈からエールをもらった私は、はち巻きをキュッと結んだ。
─『スタートラインに立って下さい』
「本当に私が勝ったら奏斗くんをくれるのよね?」
ブリ子は私の隣のスタートラインに立つと、正面を向いたまま言った。
「私が勝つんだ。ぜってぇ渡さん」
「そう…言っとくけど、私負ける気しないから」
真剣勝負。これも私と奏斗のため。
奏斗、勝ってやるからな。
待ってろォオ!!
─バンッ!!
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