「あのな、律…」
「百メートルだぞ?たった百メートルなのに、何で最初の十メートルしか速くねーんだよッ!そのまま走り抜けやァ!!それで疲れたとか言ってんじゃねェー!」
わぉ、出ました。
律の爆発。
なっがいなー。
いや、私だって分かってますよ。
私、桜井小夏は、数十メートルしか速くないと。
そして途中から力尽きて遅くなるのです。
その結果、タイムが遅くなるのですよ。
つーかさ、(愚痴入ります)
たった百メートルとか言うけどさ、私にとっては百メートルって十分な距離だからね。
実生活においてそんなに走らねぇだろ。
数十メートルだけ速ければ良いっつーの。
「…はぁ。ケンカ強いから、足も速いと思ったのに」
秋哉がため息をつきながら言った。
─ブチッ
ケンカが強いから足も速いだと…?
そんなこと
誰が決めたァアー!!
「だいたい、私、足が速いなんて一言も言ってねーからな!?勝手に決めつけんのがわりぃんだろーがァア!」
なんで、¨喧嘩強い=足が速い¨になるんだ。
秋哉は慌ててごめんと謝るが、律は真面目な顔で私を見た。
「それでも、勝負は決定事項なんだ。特訓は必要だな」
……
確かに律の言うとおりだ。
私の足が速かろうと遅かろうと、勝負は短距離走って決まってんだ。
(勝手に決められたけど)
こーなったら、今日から体育祭まで猛特訓だッ!
「まずは、その力尽きるのをどうにかしないとな!」
「おう!」
体育祭まで…
ガンバルぞッ!!
待っていろ!ブリ子!
……─────


