私が奏斗に目を向けると、奏斗は顎で律を指した。
…え?私が言うの?
私が自分に指さすと、奏斗はコクッと頷いた。
…っコイツ…!
仕方なく律に視線を戻すと、律は早く言えと言わんばかりに私を見ていた。
…いつまでも根に持たれるより、一言いって終わったほうが良い。
私は頭を下げて言った。
「り、律のお、おかげです。…ありがとうございました」
私が顔を上げると、さっきとは打って変わった、満面の笑顔をした律が目に入った。
「そんなに感謝しなくても。まぁ、どういたしまして!」
…めっちゃ腹立つ。
ぶん殴りてぇ。
奏斗は口元を手で覆い、こらえるように笑っていた。
…コイツも殴りてぇ。
私がキッと睨むと、奏斗はハッとした顔をして笑いを止めた。
「もう、律のバカ!二人はいい雰囲気だったのにぃ!」
そこへ、律を追い掛けて来た秋哉が現れた。
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