眠れない。 忘れていたタバコの臭いや、耳元で名前を呼ぶ声が蘇ってきた。 やだ。いやだ。離して。 キモチワルイ――。 「おい」 低い、冷静な声が聞こえて、 タオルケットを握り締めていた手が緩んだ。 「なに…?」 「震えてるけど。大丈夫か?」 リュウの方を向くと、相変わらずこっちに背中を向けたままだった。 「大丈夫…じゃないかも」 「……」