「前に車で送って頂いてた方ですよね?葵衣様がお幸せなら、わたくしも嬉しいです」




スッと身体を上げた絢斗は、キッチンの方へと行ってしまった。




あや…と……


ピシャッと閉じられた扉は、きっともう開くことはない。





もう、絢斗を想うのは止めよう……



春日部さんの事だけを考えて

春日部さんの事だけを想っていれば……



きっとただの幼なじみ、そしてただの執事として絢斗を見れる日が来るはず。




「パパがそう言ってくれるんだったら、あたし春日部さんを選んで良かった」



「ママは驚くだろうな」




豪快に笑うパパに、あたしも声を出して笑った。



そうでもしないと、零れそうな涙をどうしようも出来なかったから……