「今日はありがとう。楽しかった」
「僕も楽しかった。また連絡するよ。おやすみ」
「おやすみなさい」
彼の車から降りたのは、家の少し手前。
家の前まで送るって言ってくれたけれど、断った。
つき合ってないのに、もしパパに偶然見られたら春日部さんに悪いと思ったから……
走り去った春日部さんの車が角を曲がって見えなくなったのを確認して、歩き出した。
「葵衣様、お帰りなさいませ」
後ろからの声に、ビックリして体が反応した。
そのままバッと振り向くと、暗闇に照らされた外灯の下に絢斗が立っていた。
見てた…の?
心臓がバクバクと、かなりうるさく動いてる。
「映画は楽しめましたか?」
「あ…うん……絢斗はどうしたの?」
「わたくしは食事に行った帰りです」
「千嘉さんと?」
考える前に、声に出してしまっていた。
絢斗は否定も肯定もせず、口角を少しだけ上げて笑みを浮かべた。
