「そこでも寄ってくか」




駅近くのドーナツショップを、仁が指差した。




「いつもパン貰ってるし、今日はオレがお嬢様におごってやるよ」




得意気に言い放った仁がなんだかおかしくて、思わず笑った。




「じゃ、おごってもらおうかな」




ドーナツと紅茶を注文し、2Fの端の窓際に座った。




「美味しい!」




そう言って笑ったあたしを見て、仁も楽しそうにドーナツを頬張った。





「ねぇ仁……あんまり聞いたことないから、聞いてもいい?
仁はさ、好きな子いないの?」




「はっ?!」




驚いた仁は、食べ掛けのドーナツを落としそうになる。




「いっつも、うちのクラスの浅川さんが可愛いとか、隣のクラスの和倉さんがキレイとか言ってるけど、好きとは違うんだよね?
本命はちゃんといるの?」




あたしが興味津々で身を乗り出して聞くと、照れくさそうに顔を真っ赤にした仁がそっぽを向いた。