「別にあたしは意地悪してる訳じゃなくて、立場を分かって絢斗に接してねって言いたかったの。
葵衣ちゃんは、坂城グループの後継者なんでしょ?」
立ち上がった千嘉さんは、あたしの前にティッシュを置いた。
あたしがボロボロと涙を溢していたから……
「どうあがいたって、執事の息子でしかない絢斗とは一緒になれないんだから」
そう言い残して、千嘉さんは部屋を出ていった。
分かってる……
そんなこと他人に言われなくても、自分が一番良く分かってるつもり。
だけど絢斗のことが好きなのは、どうしようもないの。
頭で分かってても、気持ちをコントロールなんて出来ない。
叶わない夢を見るのは、いけないことかな……
絢斗はやっぱり、そんな風にしかあたしを見てくれないの?
