絢斗が執事になってからは、モヤモヤした気持ちに囚われて素っ気ない態度ばかり。



もし想いのままワガママ言ったら、絢斗のことだから受け入れてくれるでしょ?


今はそれに甘えても…いいかな……?




「ふぅ」と小さく息を吐いて、テーブルの食器を片付ける絢斗に声を掛けた。




「ねぇ、今日なんだけど…」



「はい、なんですか?」



「大学は?」



「今日は行かなくてもいいんです」



「じゃあ……学校まで迎えに来て」




動きが止まると、大きな目を見開いてゆっくりあたしを見た。


こんなこと言ったことないから、予想以上の驚きっぷり。




「えっ…?!葵衣様の学校にですか?」



「そう、校門で待ってて」



「…かしこまりました」




なんで?って聞かないんだよね。


お嬢様の頼みは絶対だから。



それを利用してゴメンね…




「じゃ、放課後ね。いってきます」



「いってらっしゃいませ」



「あっ、さすがに執事スタイルは無しだよ!
ちゃんとフツーの服で来てね」



「はい」



笑いながらお辞儀した絢斗を背に、玄関をあとにした。