「帰ろう」
乱暴にあたしの腕をつかむ絢斗。
「オイ、お前何だよ?!この子はオレたちと…」
「悪いけど知り合いなんで、連れて帰ります」
サラリーマンに軽く頭を下げた絢斗は「こいつらの分です」とお金をカウンターに置いた。
「お釣りは…?」と言ってる店員を無視し、強引にあたしを引っ張って店を出た。
「ねぇ、絢斗?離してよ!離してっ!!」
いっそう絢斗の手に力がこもり、握られた場所に痛みが走る。
しばらく歩くと、絢斗はバッと腕を離した。
「どうしてあそこに、葵衣様がいらっしゃったんですか?」
執事じゃない服装で
執事には似つかわしくない、怒りに任せた表情で
それでも言葉だけは、執事としてあたしを責める。
どこかで、怒られても何でも“葵衣”って呼び続けて欲しいって思ってたのに……
