「じゃあ、あっちで飲もっか」
そのサラリーマンたちのテーブルは、絢斗たちのすぐ近くだった。
「止めようよ、葵衣!」
朱里の声が思いのほか店内に響き、ふいにこっちを見た絢斗と視線がぶつかった。
驚いて目を見開いた絢斗が、ゆっくりと寄ってくる。
だいぶ飲んだのか、フワッとお酒臭さが漂ってきた。
「葵衣、こんなとこで何してんだよ?」
酔った絢斗は、執事の立場を忘れていた。
けどそれよりも
聞いたことのなかった怒りを帯びた絢斗の低い声色に、斜め下に向けた視線が左右に泳ぐ。
怖いよ…
すごく怒ってる……?
