「ちょ、ちょっと?!葵衣!」
突然大きな声を出した朱里が、あたしの服の袖をグイグイと引っ張った。
「何?!」
朱里が指差す方に視線を移す。
「あれって、絢斗さんだよね?」
確かにあたしの目線の先には、屈託のない笑顔を見せてる絢斗がいた。
絢斗を含め4人で、楽しそうに大声で笑いながら歩いている。
中には女の人が1人いた。
「大学の友達かな?絢斗さんって、あんな顔もするんだね」
執事の姿しか見たことがなかった朱里。
でもね、あたしも見てたよ……あんな無邪気な顔。
今は、口元にうっすら浮かべるような笑みしか見ていない。
昔の絢斗がそこにはいて、あたしの胸にズキンズキンと鈍い痛みを与えた。
