「嫌と言われてもわたくしはもう、葵衣様の執事なんです。どうかご理解下さい」
感情のこもってないような、冷ややかな言葉に何も返せなかった。
「それでは、失礼いたします」
扉の前で一礼し出ていく絢斗を、ただ呆然と見つめるだけ……
その視界がだんだんとボヤけ、涙の粒となって零れた。
どうしてなの?……絢斗…
確かにここ1年は、はなれに住む絢斗とはあまり顔を合わすことはなかった。
受験生だから勉強が忙しいんだと思ってたし、会えば「葵衣、元気か?」って大好きな笑顔で言ってくれたよね……?
なのに…どうして?
