「葵衣…」



あんなに呼ばれたかったはずの名前が、嬉しくなくて……


胸に飛び込みたくても、頭には千嘉さんの姿がよぎる。




「帰って……」



「だけど、葵衣…」




「1人にしてってば!」




もう傷つきたくないの…



この家に生まれたのは、恨んでもどうしようもないのに


強くならなきゃいけないのに……






「何かあったら、また電話して」



そう言い残した絢斗は、静かにリビングを後にした。