「でもそれじゃ、春日部さんに悪いよ…」





「ここまで男が言ってんだからさ、甘えちゃってよ。それでも葵衣ちゃんがどうしても無理だっていうなら、その時にまた振ってくれていいから…ね?」




小さく縦に頷いたあたしに「ありがと」と言って、頭をポンポンと優しく叩いた。




「さ、遅くなるから帰ろうか」




エンジンをかけた春日部さんは、アクセルを踏んで車を走らせた。




あたし、流されてるかな…?



分かってるけど、今は春日部さんの気持ちに寄りかかってるのが安心出来るっていうのが、ホントのところだったりする。




車の窓から流れゆく景色を眺めながら、思い通りにならない自分に歯がゆさと苛立ちが交差した。




早く絢斗を忘れて


春日部さんを好きって思いたい。




今日のキスが、幸せな想い出になるように……