「ちょっと、お手洗い行ってくるね」
そう言って立ち上がりトイレを済ませ扉を開けると、女性の足元が視界に入った。
「スミマセン、どうぞ」
待っていた人だと思い、そう言って通りすぎようとすると「葵衣ちゃん」と名前を呼ばれて視線を上へ向けた。
「千嘉さん……」
一番会いたくなかった人が、目の前に立っていた。
「友達と食事に来たんだけど、ずっと葵衣ちゃんじゃないかなって思ってたの。一緒にいるのって、彼氏?」
「……はい」
「そうなんだぁ!すっごく似合ってるよ」
本当に嫌だ。
早くこの場から逃げたいよ……