玄関に鍵を差したまま飛び出して──私は驚愕した。 驚いたってもんじゃない。 一瞬、息をするのを忘れたほどだ。 「何で、」 「菜月?」 くるりと黒田太陽が振り返る。 やつを見、 表札を見、 それからお隣さん宅、家全体を見て。 私は改めて悲鳴をあげた。 だって、だって! 朝まではまだ。 武川さん。 そうそこは。 おじーちゃん事件の時お世話になった、そう武川さん家だったじゃない!