「もしもし」
学校へ向かって歩いていると、ホームレスらしきおじいさんが話しかけてきた。「もしもし、いらない物はくれんかね。交換でも構わないよ。」
少し気味が悪かったが、優しそうな目をしたおじいさんだったので、一瞬何か飴でもないかと、ズボンのポケットに手を突っ込んでみた。
「なんだこれ…」
チャリッと音がして取り出してみると、それは見慣れない一本の鍵だった。トシが不思議そうにそれを見ていると、おじいさんは小さな声で言いました。
「おお、ありがたや。ありがたや。」トシが「とりあえずしまっておくか」と、手を閉じるよりも早く、その鍵とおじいさんは姿を消していました。
「なっ…」
何をするべきか分からず、どうすることも出来ずにしばらくボーっとしていると、だんだんあのじいさんはただの泥棒だったのだと無性に悔しくなってきた。