夜。
陽が落ちたばかりの時間。

海からあがった観光客は、浜や宿や酒場にあつまり、煌々と明かりをたいてイアリミアに闇を近づけさせない。

夜のイアリミアは、海はもちろん、陸を旅する者にとっても巨大な灯台になる。

その灯台が微かに見える都市外の荒野。

魔族のキャラバンが集まるキャンプ地で、
星空の下、

シルキスが集会の真ん中に座って話をしている。

「本日は、皆さんの協力のおかげでとても有意義な一日を過ごせました。ありがとうございます」

集まった魔族に礼を述べるシルキス。
傍らの魔王さまに目を落とし、続ける。

「特に、魔王さまはこんな感じです」

シルキスの隣にはシャチを抱えて眠っている魔王さま。

集会の挨拶までは起きていると頑張っていたが、もたなかった。

満足そうな寝顔が、昼間のはしゃぎぶりを物語っている。