「負けたらどうするつもりだったのですか?」
「安心しろ、その時は賭けなど反古にして、ここを逃げ出すつもりだった」
「え?それはずるーいっ!」
「ふっふっふっ、壁の外に出てしまえば、そっちは追ってこれないだろう」
金の魔王さま。
金の髪をなびかせて悪のポーズ。
シルキスの手が、その頭にぽこっと置かれる。
逃げられないようにして。
「それで、勝っちゃったときはどうするのです?アイオネをもらって、誰が何をするつもりです?」
「ん?」
訊かれて、金の魔王さまが小首を傾げる。
頭に置かれたシルキスの手の重みを感じながら、黒の魔王さまの背後に迫るアイオネを見て。
「そう言われれば、使い道がないな」
「でしょうね」
それから金の魔王さま、シルキスの手を自分から両手で捕まえて。
「シルキス、お前にも使わせないぞっ。使ったら怒るぞ。使おうと思っただけで怒るぞ」
勝手な想像で、シルキスにむかってプンプンと怒る。


