新しい土地を拓いて生きる辺境民にすれば、結果よければ全てまあよし。
今と今後が豊かで平穏ならばなおよし、と受け入れられるが、
大戦争時、魔族と正面で戦い続けて人間を守った歴史を持つ王国から見れば、
イアリミアの在り方は不愉快を通り越し、裏切りという感情を抱かせるのも容易に想像できる。
「まあ、僕は辺境民なので……」
シルキスは、魔王さまが離れている間に手早く手持ちの食材を並べてしまう。
おそらく魔王さまが戻ってくるときには……、
「どうだシルキス、すぐに戻ってきてやったぞ」
「やはり一番の大器を持って来ましたね」
「む、なんだその予想どおりという顔は?」
「よく気がつくと言ってください。器は僕が持ちますので、魔王さまは取る係をどうぞ」
「ふんっ、焦げそうな食材達に免じて、そうしておいてやる」
金の魔王さまは、両手で抱えていた木製の大器を自分の頭に掲げるようにして、シルキスに手渡した。


