魔王さま100分の2


新しい土地を拓いて生きる辺境民にすれば、結果よければ全てまあよし。

今と今後が豊かで平穏ならばなおよし、と受け入れられるが、

大戦争時、魔族と正面で戦い続けて人間を守った歴史を持つ王国から見れば、

イアリミアの在り方は不愉快を通り越し、裏切りという感情を抱かせるのも容易に想像できる。

「まあ、僕は辺境民なので……」

シルキスは、魔王さまが離れている間に手早く手持ちの食材を並べてしまう。

おそらく魔王さまが戻ってくるときには……、

「どうだシルキス、すぐに戻ってきてやったぞ」

「やはり一番の大器を持って来ましたね」

「む、なんだその予想どおりという顔は?」

「よく気がつくと言ってください。器は僕が持ちますので、魔王さまは取る係をどうぞ」

「ふんっ、焦げそうな食材達に免じて、そうしておいてやる」

金の魔王さまは、両手で抱えていた木製の大器を自分の頭に掲げるようにして、シルキスに手渡した。