何も考えずに積んだように見せて、
鉄板を乗せても全くぐらつかないレンガの壁。

鉄板を端から端まで見事に水平に支え、
下で熱く燃える炎と、

上で音をたてて焼ける肉魚野菜が、
今から魔王さまの目に浮かぶ。

「こういう作業させたら、シルキスにかなう者はいないな」

「久々の最高評価を頂き光栄です」

シルキスは、えっへん。

まあ、金の魔王さまのために、手作りで生活具をこしらえる人間は、シルキスしかいないのだが、それを含めてもえっへん。

「ではもうひとつ、鍋用の炉もつくりましょう」

「許す、つくれ」

金の魔王さまは、片手をあげて応援。

遠く、両の足首を持たれて不思議な角度で振りまわされて泣く黒の魔王さまの姿は、もうこの二人には目に入らなかった。