そして今、
ドアもハシゴもそのまま。

そのままどころか、

塔内にも、魔王さまがひとりでドアを使えるようなハシゴを置き、

ひとりで登るなと言っておきながら、ドアに鍵をつけられないアイオネがいる。

だから、

「魔王さま」
「なに?」

アイオネができない自制を、魔王さまに求める。

「本当にひとりで登るのはやめてくださいね。できればこのドアの開けるのも」

それもこれも塔の欠陥のせいだ。

さわっただけで崩れるなんて、欠陥以外のなんでもない。

そう思うことが、

「ふふふ、どうしようかな?」

魔王さまの笑顔を見る次に、慰めになる。




──魔王さまと欠陥住宅 終わり