もっとも、
「あんな顔で穴掘りを始めた男の頭に、私への気配りなんか残っているのかしら?」
アイオネは、つぶやく。
「気にされてないと不愉快?」
アイオネの行く先に小走りに回りこんで来るのは、黒の魔王さま。
「こちらは荷運びですよ。手伝ってくれるのですか?」
アイオネが訊くと、黒の魔王さまは、2回、両足で跳んでアイオネと向きを合わせる。
「手伝う上に応援もしてあげる」
「なら、応援できるように、なるべく軽くて怪我をしないものを運んでくださいね」
「うん、そのつもり」
黒の魔王さまは、こぶしを握ってポーズをつくる。
背はアイオネよりも高いのに、手はアイオネよりもちいさい。


