「むおっ」
棒には魔王さまがつけた歯型。
ちまっこい牙でつけた、ちまっこいへこみが並んでいる。
「卑怯だぞ、シルキス」
「夕食の話ですよ」
棒を取り返そうとする魔王さまの注意を、シルキスはそらす。
「むむむ、後で返してもらうぞ」
「返してもらってどうするつもりです」
「で、夕食の件ですが」
アイオネは、語気を強めた。
自分の分の食べ終えたアイスの棒をふって、争いに介入する。
「シルキスが目覚めたら、祝いの席をつくるという話でしたがどうされますか?」
「そうだった、祝うぞ」
金の魔王さま関心が完全に切り替わる。
「そういう話だったか?」
シルキスは、アイオネに問う。
「ええ、あなたの魔王さまが、あなたが寝ている間中、熱心に」


