「むううっ」
普段なら、だんだん疲れてくる魔王さま。
漏れ出すヘナの回復魔法は、こういう無駄な運動にも働く。
ぴょんっ、ぴょんっ、ぴょんっ。
頑張る魔王さま。
一方、シルキスの傷は、なかなか塞がらない。
シルキスは平然としているが、負っている傷は、おまけ回復では追いつかないほど深いということだ。
「……シルキスさま、お話の前に治療を」
ヘナは、魔王さまと違う角度から手を差しだした。
輝く手のひら。
作り始められる天使の輪。
シルキスは、その手と輪をそっと押し戻した。
「僕は、しばらく大丈夫。ヘナは、退避完了までここの防壁を守ることを優先。いいね」


