空を覆う灰色の雲は、そのまま。
船のすぐ外で暴れる風と雨と波もそのまま。
今ある現実として船上から見える。
が、風も雨も船自体には届かない。
さっきの膜がその境か?
キーヤの経験では、海から時折やってきた特大の嵐にある無風の目に入ったときに近い。
「ふう……」
油断するなよ。
キーヤは、自分に言い聞かせながら息をつく。
警戒しながら、突撃棒にそって甲板まで飛行。
今のところ、目に見える範囲には敵になりそうなものは無い。
あちこちに穴がいて逆剥けた甲板も、雲まで届きそうなマストの見張り台も、無人。
ゴーレムや幽霊の類も見えない。


