高く上がれば、風は暴風に。
そうでなくても、すでに雨は豪雨に。
キーヤを守る風が、キーヤを襲う風と摩擦を起して軋む。
キーヤは、波の壁を越すと天馬を傾け真横に飛んだ。
飛んだすぐ後に、キーヤがいた場所を上下から噛み千切る大気の牙。
体勢を崩すギリギリでキーヤは外の風を読み、また別の牙が口をあける前で反転、やはり真横に傾いて、暴風の隙間を切り裂き人魚の道に戻ってくる。
天馬と一体になったこれしかない軌道。
天馬が描く光の駆け跡と力強くしなる翼に、人魚達は喝采。
キーヤは、無理をさせてすまないと天馬の首をなでる。


