「分からないのか?」 「少なくとも、僕が生まれる前にはあったと思います」 「そうか……」 魔王さまは、自分の記憶をたどってみる。 しかし、魔法の使い方や100分裂した経緯などの重要なことがごっそり消えている記憶。 水筒の蓋という些末なことが残っているはずもなかった。 「仕方ない、とりあえず褒めておこう」 言って、残りのお茶を飲む。 「お茶の味はどうですか?」 「ああ、美味いぞ」 魔王さまは笑顔で答え、おかわりを要求した。