それからヘナは、リクエストに答えて片側だけ翼を開閉したり、手足のように器用に前後上下に動かして見せた。 「おおっ、おおおっ」 黒の魔王さまは、ひとつひとつの動作に声をあげる。 「こんなに自由に動かせるものなんだ」 最後に翼の先と握手。 「……動くだけで、何かの役に立つわけではありませんが」 ヘナは、照れたように翼ごと肩まで湯に沈む。 「じゃあ、輪は?頭の輪はどうなってるの?」 「……これですね」 ヘナは、湯につかったまま片手をあげ、 指先からごく当たり前に輪を出した。