「そうか、アイオネは王国の貴族だから大家族なんだな」

「まあね」

アイオネは、シルキスのことを思って控えめに答える。

「僕も開拓仲間の集団暮らしだったから、大家族といえば大家族だな」

またアイオネの心を読んだのか、シルキスが言う。

「でも、その家族も魔王さまの為に捨ててしまったのでしょう?後悔していない?」

アイオネは、訊いた。

こんなことが訊けるほど、アイオネもまたシルキスに気を許しているのだと、アイオネ自身が思った。

シルキスは、明快に答える。

「してないよ。全く」

答えるシルキスの顔は、子供に見えたときとは逆。

揺るがない男の顔だった。



──魔王さまとお風呂 終わり