アイオネは、少しだけシルキスの方に身を乗り出す。
シルキスの腰を指差し、疑念に満ちた声で訊いた。
「その黒い剣はなに?普通じゃないでしょう?」
「これか」
シルキスは、座ったまま魔王殺しを抜いた。
廊下の照明で浮かび上がる真っ黒な刀身。
手首を軽く動かし、
アイオネに投げてよこす。
アイオネは、片手で柄をつかんで受け取った。
振ってみろ。
シルキスが、手振りでそう言ってくる。
アイオネは片手で軽く構えて、魔王殺しを振り下ろした。
「なっ!!」
驚愕するアイオネ。
過去のシルキスと同じく、アイオネもまた、それが何か一振りで理解できたらしい。


