門の内。
ヘナの背中で戯れている魔王さま。
ヘナの耳元で言う。
「大丈夫だと思うが、もうひとりの私がふらふらしている。後で診てやってくれ」
「後じゃなくて、今、診て欲しい」
言ったのは、ヘナにぶっとばされていたはずのシルキス。
金の魔王さまの後ろ襟を掴んで、子ネコように持ち上げた。
ヘナから引き剥がされ、手足をぶら下げた状態で魔王さま。
「なんだシルキス、もう起きたのか」
「ええ、もらったのは痛いだけのパンチですら」
シルキスは、当然と答える。
自分の魔王さまが駆け出すのを見てしまうと、おちおち寝ていられない。
シルキスは、もう片方の手をヘナに差し出した。
「怪我はないか?ヘナ」
もちろん怪我だらけなのは、シルキスだ。


