「向こうの私は無事みたい。アイオネに抱っこされてこっちに来るよ」 「アイオネは、まだ襲って来そうですか?」 「どうだろう?うわっ、走ってきた」 「ぐっ」 シルキスは、動けない魔王さまを脇に置いて立ちあがった。 立ったところで、また目がくらむ。 シルキスは目で見ることを諦め、気配と音だけでアイオネのほうを向いた。 その挙動で、黒の魔王さまが察する。 「シルキス、もしかして目が見えないの?」 「はい」 伝え方を工夫している暇はない。 シルキスは、最短の返事で答えた。