「はっ」 言われて、アイオネは風を切って動いた。 篭手が壊れてむき出しになった手の平を縦にして、魔王さまとシルキスの口の間に差し込む。 むちゅっ。 間一髪、アイオネの手の表と裏にぶつかる、魔王さまとシルキスの唇。 シルキスの狂犬状態は、それで解けた。 冷静になった頭で今の状況を把握し、 手の平の向こうでキスを迫っている、黒の魔王さまを見て声を出す。 「うわっ」 「逃げてっ」 黒の魔王さまがシルキスに命じる。 「逃げるなっ!」 対して、金の魔王さまも命じる。