つもりだったが、勇者の足腰は強靭。
ふたりとも軽々と受け止められてしまった。
「あら?」
「おおっ」
感心する魔王さま達。
片腕で腰を抱かれた状態で、相手の勇者の顔を間近で見る。
それがまた、シルキスとアイオネに火を注いだ。
自分の魔王さまを抱かれた怒りで、殺気がこれまでと比較にならない基準で増幅する。
狂犬状態。
シルキスの魔王殺しを握る手と、それを叩き返すために握られたアイオネの篭手が、ミシミシと音をたてる。
バキンッ。
圧力に耐えられず、
アイオネの篭手が内側から壊れた。
「待て、待て、待て、おまえら」
「もういいから、やめて」
魔王さま達は、状況の悪化に焦る。


