魔王さま100分の2


シルキスは肘を押さえていた手を外され、後ろに跳び退った。

剣先が目の前を通過する。

なんとかよけた、つもりだったが遅れて額の肉が裂けた。

血が噴き出る。

一方、アイオネが下ろした剣は制御されずに地面を叩き、真ん中から折れて砕けた。

「ぐううーっ」

アイオネが、折れた剣を捨ててシルキスを見る。

「……」

シルキスは、額から流れ出す血で染めた顔で見返す。

こんな傷は、あってもなくても関係ない。
相手が立っているなら、戦いはこれからだ。

ふたりの身体の中で勇者の血が謡う。

シルキスは、素手になっても遠慮はしないと魔王殺しを向けた。

アイオネは、その血をぬぐう暇も与えないと身構える。

「おーい、もうやめなさーい!」
「やめろー。そして私を助けに来ーい!」

そこに聞こえた、魔王さま達の声。

『助けに来ーい!』

その部分に反応して、シルキスとアイオネはハシゴにむかって跳ぶ。