シルキスは肘を押さえていた手を外され、後ろに跳び退った。
剣先が目の前を通過する。
なんとかよけた、つもりだったが遅れて額の肉が裂けた。
血が噴き出る。
一方、アイオネが下ろした剣は制御されずに地面を叩き、真ん中から折れて砕けた。
「ぐううーっ」
アイオネが、折れた剣を捨ててシルキスを見る。
「……」
シルキスは、額から流れ出す血で染めた顔で見返す。
こんな傷は、あってもなくても関係ない。
相手が立っているなら、戦いはこれからだ。
ふたりの身体の中で勇者の血が謡う。
シルキスは、素手になっても遠慮はしないと魔王殺しを向けた。
アイオネは、その血をぬぐう暇も与えないと身構える。
「おーい、もうやめなさーい!」
「やめろー。そして私を助けに来ーい!」
そこに聞こえた、魔王さま達の声。
『助けに来ーい!』
その部分に反応して、シルキスとアイオネはハシゴにむかって跳ぶ。


