魔王さま100分の2


島の砂浜の前までまでくる船。

まだ進んでいる最中だというのに、舳先からひとり跳び出してきた。

大ジャンプ。
間の海を軽々と跳び越え、砂浜に着地。

シルキス達が乗ってきた小船を見つけると、砂を蹴りあげてこっちに突進してきた。

この距離では顔の判別はつかないが、間違いない。
アイオネだ。

非常識な脚力で島の緑の下をあっという間に駆け抜け、領地の門に着くと同時に蹴り開けた。

島中に響く轟音。

島の木々で眠っていた鳥達が驚いて一斉に飛び立つ。

門は反動で一回二回と開閉を繰り返し、三回目で閉じた。

「おおおっ、いつもより凄い音だな。お帰り~、アイオネ~」

黒の魔王さまは、陽気に手をふって出迎える。

「ほう、勇ましいな」

金の魔王さまは、アイオネのど派手な登場を褒める。

「たしかに怒ってるな」

シルキスは、腰の魔王殺しの握りをたしかめた。

「魔王さまっ、ご無事ですかっ!!」

門を通ったアイオネもまた、腰の剣に手をかけた。

防具も、王国勇者仕様の金属甲冑を着込んでいる。