「ここでの暮らしに不満がないなら、それでいい」
金の魔王さまが言った。
「だが、庭の整備はなんとかしてもらえ。ただ土があるだけではつまらんぞ」
「何かすることあるの?」
「何かどころか、何もしていないだろう。私がいた領地ではな……」
畑、小道、つくる予定だった窯。
焚き火、一日だけの夜祭。
金の魔王さまが、自分の領地の庭にあったもの、庭でしたことを語りだす。
「へえ、それはいいね、そうか、」
黒の魔王さまは、
話のひとつづつに相槌をうつ。
そこからやがて、互いのが持っている記憶や能力の話になり、時間が過ぎていった。
シルキスは、魔王さまどうしの語らいに耳を傾けつつ、夜の真っ暗な海を見張る。
と、海に浮かぶ船の灯り。
真っ直ぐ、大急ぎで島にむかってくる。
帰ってきたか、早かったな。
シルキスは、口元で笑った。


