魔王さま100分の2


「ここでの暮らしに不満がないなら、それでいい」

金の魔王さまが言った。

「だが、庭の整備はなんとかしてもらえ。ただ土があるだけではつまらんぞ」

「何かすることあるの?」

「何かどころか、何もしていないだろう。私がいた領地ではな……」

畑、小道、つくる予定だった窯。
焚き火、一日だけの夜祭。

金の魔王さまが、自分の領地の庭にあったもの、庭でしたことを語りだす。

「へえ、それはいいね、そうか、」

黒の魔王さまは、
話のひとつづつに相槌をうつ。

そこからやがて、互いのが持っている記憶や能力の話になり、時間が過ぎていった。

シルキスは、魔王さまどうしの語らいに耳を傾けつつ、夜の真っ暗な海を見張る。

と、海に浮かぶ船の灯り。
真っ直ぐ、大急ぎで島にむかってくる。

帰ってきたか、早かったな。
シルキスは、口元で笑った。