「それは、私が」

ヘナが進み出た。
小柄な少女。

エミリオに、話を伝えにきた受付によれば、
姿は怪しいが、神の信徒でかなり高レベルの治療術をみせたという。

その話と待合室での元患者達の様子から察するに、エミリオよりも数段高ランクの僧侶だ。

ヘナは、エミリオの前に立つ。

自分を覆っていた頭巾とローブを脱いだ。

「……なんとっ!!」

頭巾の下から現れるのは、

銀色に輝く髪、汚れなく透き通った肌、それよりも深く透き通る瞳。

そしてローブが外れた背中から、

美しく真っ直ぐ伸びる白の翼と、
途中で完全に捻れ千切られたやはり白の翼が、一対で広がる。

「片翼の天使が魔族とっ!?」

エミリオの驚愕の声が響いた。



──魔王さまと診療所 終わり