キーヤは、ちらっとヘナを見る。

(ここは逃げないか?)

目で信号を送る。

ヘナは、その信号を微かな笑みと頭巾で遮断した。

自分のできることは終わりだと、何も言わずにキーヤの背中側に隠れてしまう。

(待てっ、ヘナ)

言おうとしたが、子供に遮られた。

「お兄ちゃん、魔法使えるの?」

女の子だった。

大人の女とは違う深さで、キーヤに近づいてくる。

キーヤは、どうするか迷いながら答えた。

「つ、使えるぞ」
「今、できる?」

できるよね?
という、いつの間に出来たのか分からない信頼。